頚椎人工椎間板置換術

頚椎人工椎間板置換術

Adhoc委員会

頚椎人工椎間板委員会
委員長 原  政人
委員 伊藤 清志 乾  敏彦 大橋 洋輝
黒川  龍 下川 宣幸 菅原  卓
高橋 敏行 竹島 靖浩 内藤堅太郎
水野 正喜 原   毅 山本  優
青山 正寛 高見 俊宏(理事長)

活動目的

頚椎の可動性を温存したうえで、脊髄や神経根の減圧を行うことのできる人工椎間板置換術の安全な手術方法を確立するとともに、日本に普及させるための活動を行う。

頚椎人工椎間板の歴史

欧州では、1990 年代から臨床使用がなされ、米国では2007年に食品医薬品局(FDA)に承認され、現在欧州で20カ国以上が、アジアでも多くの国で認可されている。本邦では 2017年12月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認され、1椎間使用が可能となり、引き続き2椎間が2019年11月から承認された。本邦では、Zimmer Biomet 社のMobi‒C(2013年FDA に認可)とMedtronic社のPrestige LP(2014年FDAに認可)の2製品のみが使用可能である。
これまでに1椎間の成績は日本脊髄外科学会理事長の高見俊宏によって論文発表されたが、非常に良好な臨床成績を報告している。(Safety and Validity of Anterior Cervical Disc Replacement for Single-level Cervical Disc Disease: Initial Two-year Follow-up of the Prospective Observational Post-marketing Surveillance Study for Japanese Patients. Takami T, et.al. The Japan Neurosurgical Society. Neurol Med Chir (Tokyo). 2022 Nov 15;62(11):489-501.) 2椎間手術も現在症例を蓄積しており、近々報告していく予定でいる。現時点での臨床成績は1椎間の人工椎間板置換術同様、非常に良好である。

Medtronic社のPrestige LP

Biomet 社のMobi‒C

頚椎人工椎間板の意義

人工椎間板が登場するまでは、一般的には前方固定術がなされていたため、手術椎間の可動性は失われていた。しかし、運動器である頚椎の可動性が失われることをよしとしない脊髄外科医は、可動性を温存する努力をしていた。そのひとつが頚椎前方除圧術(椎間孔拡大術)であり、ヘルニアを含む一側椎間孔狭窄に対して行われ、徐々に普及してきている。(原 政人. 頚椎神経根症に対する前方神経根除圧術 適応と限界.脊椎脊髄ジャーナル. 2015; 28: 782-90,)しかし、脊髄が圧迫されている病態に対しては椎間不安定性をきたす可能性があり、適応としてこなかった。椎間板腔内の椎間板を摘出し、骨棘などを除去して固定をしない減圧術が以前行われていたが、やはり不安定性を惹起する可能性が高く、行われなくなった。人工椎間板置換術は本来の目的である、脊髄及び神経根の減圧による神経症状の改善を図ることができるとともに、頚椎の可動性も温存でき、本来の運動器としての役割も維持できる優れた手術方法である。

今後の展開

今年から、人工椎間板置換術と固定術の併用、人工椎間板置換術と頚椎前方除圧術の併用が日本脊髄外科学会のもと認可された。しかし、当学会の慎重な姿勢から、頚椎前方手術に慣れた頚椎人工椎間板委員のみで安全性や臨床成績の検討を行うこととなった。現時点で症例の蓄積が進まず、どのような症例なら安全に手術ができ、有効性が高いのかなどを討議する場を設ける必要性を痛感している。前向きに進めるためにも勉強会を開き、安全かつ効果的に手術を先行している委員からの発表の場を設け、安全性や有効性について委員会で議論していきたい。人工椎間板置換術の今後の普及のため日本脊髄外科学会は尽力していく予定である。

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